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精神症状の理解とアセスメント①
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Kana Aizawa
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精神症状を表す医学用語は350以上あると言われています。その中から看護でもよく使われる用語を、MSEに基づいて整理してみました。 (院内学習会のスライドを修正したものです)
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精神症状の理解とアセスメント①
1.
精神症状の理解とアセスメント① ~MSEから捉える精神症状(外見?行動?言葉)~ 医療法人社団正心会
岡本病院 精神看護専門看護師 相澤加奈
2.
脳?心?精神 心:人間の理性?認知?感情? 意志などの働きのもとに
なるもの 脳:人間の理性?認知?感情? 意志などをコントロール しているもの 精神:脳と心が作用しながら 生まれたもの 実はまだよく分かっていない領域ですが、 ここではこのように考えてみます
3.
精神の病気を考える ?精神病の診断がついたとしても、脳や心の働きが全て 変調をきたしているわけではない
?「健康的な部分」や「その人らしさ」を大切にする いくつかの症状 と徴候が集まって、 病気の診断がつけ られる 気持ちが焦って 落ち着かないんです 自分の考えてることが 周りに知れ渡っていて 外に出たくない いつも誰かに見張られ てる感じがするんです
4.
症状(症候)と徴候 症 状
患者さんの主観的要素を含む表現 徴 候 現れた症状から観察者が下す客観的な判断 症候群 ある病像を表現するために 複数の症状をまとめたもの 認知症? 実際には自覚症状? 他覚症状を合わせて 広く症状(症候)と 呼んでいる
5.
MSE (Mental Status
Examination) 精 神 現在症 査 定 視診→触診→打診→聴診 血液データ、レントゲン画像、 心電図、酸素飽和度… Physical examination 身 体 査 定 今の患者さんの精神状態を 様々な視点から見ていく 客観的で保存可能な データに代わるもの 精神科では医療者が行う コミュニケーション 観察、記録、 アセスメント
6.
MSEの枠 組み 精神状態を観察するためのポイント
外 観 言語活動 感 情 行為の 変化 異常行為 意思?欲動 思 考 知 覚 知識と知能 意識と認識 自我意識
7.
精神状態とセルフケア介入のレベル 軽 度
3~7日は安定している 日常生活の支障がほとんどない セルフケアを積極的に促進 中等度 1~2日ごとの変動 日常生活への支障がある 状態が良い時にはセルフケアを促進、 悪い時には保護的に関わる 重 度 1日の中で変動がみられる 日常生活の支障がかなり強い 刺激やストレスを減らし、セルフケアに保護的に関わる 抗精神病薬の力を借りて休み、思考を静止させる 身体感覚を強化する 現実見当識を高めるために時間の流れを伝える MSEの項目に対する精神状態 どの程度変動しているか、日常生活への影響はどうか
8.
外 見 患者の内面生活や精神状態は、その外観
や行為に反映される。服装、表情、話し ぶりなどを観察し(中略)外観?行為が 患者の年齢や社会的地位にふさわしいか、 その場にそぐうか、過去との連続性が保 たれているか、などに注意が必要である (濱田秀伯:2009)
9.
外見を看る5つの視点 表情 姿勢
態度 体痕 着衣 結髪 化粧や服装も 大切な観察ポイント
10.
表 情① 躁状態では表情過多となり、必
要以上に上機嫌、陽気で落ち着 きなく状況に応じて変化する、 多表情になることがある うつ状態では悲しげで、希望が 失せ、顔は生気に欠け、目には 光沢がなく、視線は固定し、眉 間に三角の皺(フェラグートの 皺)をよせ表情減少となる
11.
表 情② 寡表情は表情減少と同
じ意味で、特に神経疾 患(認知症、パーキン ソン病)に用いられる 統合失調症の無感情では、表情 に乏しく無表情になる 内面の緊張が強い場合も硬い 顔つきになる
12.
表 情③ 精神内界の不調和が表情に
現れると、ばらばらで矛盾 した表情不全を呈する しかめ顔 ひそめ眉 とがり口 軽いものでは顔面攣縮を呈する ?緊張のあらわれとして まばたき、肩の挙上 舌の出し入れなどがある 統合失調症患者によくみられる表情
13.
表 情④ 情動(感情)失禁では、わずかな
ことで泣いたり笑ったり怒ったり するが、刺激の反応の内容関連が 保たれている 脳血管性認知症など広範囲な脳器 質疾患に見られる 空笑は統合失調症患者の示す 空虚な笑い …とされていますが 表情の自動症 患者さんたちの空笑の中にいると 何とも心地が良いのです 私にとっては癒しの笑いです 「空笑の輪」という表現もあります
14.
姿 勢① 抑うつ状態では、前かがみの
うちひしがれた姿勢になりやすい 躁状態では意気盛んな姿勢が見られる
15.
姿 勢② 統合失調症や気分障害などの緊張病状態で見られる
カタレプシー 常同症 他動的に不自然な姿勢にしても その姿勢をいつまでもとり続ける 単調な同じ行動、姿勢を繰り返す
16.
姿 勢③ 異常不随意運動
身体部位にひとりでに生じる 運動過多によって生じる、筋 の不随意な収縮運動 一過性の四肢のこわばり、歩 行困難、脱力、嚥下困難が起 こることがある 多くは錐体外路障害による もの、心的な緊張場面で 生じることが多い パーキンソン症候群では 手指の安静時に薬を丸め るような振戦が一側から 始まることが多い
17.
姿 勢④ 抗精神病薬による錐体外路症状
アカシジア(静坐不能) いらいらして落ち着かず、 じっとしていられない状態 主に下肢のむずむず感や灼 熱感、姿勢の絶え間ない転 換、足踏みなどを伴い、不 安が強く夜間に増強し歩行 で軽減する 主に抗精神病薬の錐体外路 症状としてみられる ジスキネジア 振戦よりも規則性や方向性 に乏しく、リズムや振幅が 一定しない動きで、静止時 に生じるものと、動作時に 見られるものがある 遅発性ジスキネジアは、抗 精神病薬の長期連用により 顔面、とくに口周囲や下に 生じる 老年に多く、頻度は15~ 20%といわれ、開口で軽減 する ジストニア 四肢の近位と体幹の筋群 に生じる捻転性の筋トー ヌス(緊張)異常 抗精神病薬によるものは 90%が投与5日以内に生 じ、若い男性に多い
18.
態 度① 躁状態では活発で、馴れ馴れしい
注意が集中せず次々に新しいもの に移っていく(転導性) ことが思い通りに運べば爽快 だが、意に反すると、 刺激的?攻撃的になる うつ状態では活気に乏しく、動作は緩慢で、 周囲にあまり関心を示さない 退行期メランンコリーでは不安、焦燥が強く じっとしていられず不穏になることがある
19.
態 度② 統合失調症患者では、不自
然で唐突、わざとらしい感 じを与える ひねくれて粗野になったり、 過度に丁寧になったりする 不自然さ プレコックス感 (プレコックス?ゲフュール) 統合失調症患者と接した時に 起こる、直感的な感情 医療者自身の対人接触が手応えを失っ て困惑を感じるが、こちらが感じてい るように患者さんも医療者との距離を 感じていると考える とっつきに くい、拒絶 されている 感じ なんとなく 近寄りがたい
20.
態 度③ 拒絶症
外からの働きかけに 抵抗し拒否する 命令自動 外からの指示を自動 的に受け入れる 統合失調症の緊張病状態で 見られることが多い 反響症状 相手の言葉や身ぶりを意味もなく反射的に行う
21.
精神内容は表情?態度などとともに個人?家庭?社会生活 における行動、行為の異常としてあらわれる 行動
刺激に対して、受動的 反射的に実行すること 行為 動機にもとづいて決意され 能動的に実行すること 行動の変化?異常行為
22.
行動化《acting out:アクティングアウト》 運動性《自動的?反射的な運動ができること》
精神運動性:精神の働きによって起こる運動 精神運動性興奮 ? 昏迷(無動) 不安や葛藤が言語化されずに 行動のかたちで表現されること
23.
行動の量的な変化 多動 《運動性が増加した状態》
過活動?活動亢進 《行動が増加した状態》 活動低下 《運動性の低下はないのに、行動全般が少なくなった状態》 寡動 《麻痺はないのに運動性が 低下した状態》 精神運動制止 しようと思いながら 行動に移せない 昏迷 外からの刺激にも 全く応じず 動かない 動作緩慢 無 動 錐体外路症状 不 穏 興 奮 意図しないで生じる不随意運動
24.
行動の質的な変化 統合失調症による 途
絶 させられ行為 衝動行為 欲動がコントロール できず直接行為に 移されること 攻 撃 対象に敵対し危害を 加えようとする行動 攻撃が自分に向けられると 自殺、自傷になる 強迫行為 ある行動に駆り立てられて 行わないと気が済まないこと
25.
失行 筋や四肢に運動機能障害なく、命令は理解し対象の把握 もできるのに、求められた動作が正しく行えないこと
観念失行 構成失行 個々の単純な行為は可能だが、 それらを組み合わせた複合的 な、系列的な行為ができない 空間的な構成行為が障害される
26.
生理機能に関連する行動異常 食欲過多 ?
食欲減退 拒 食 異 食 遺 尿 弄 便 過眠 ? 不眠 ナルコレプシー 睡眠時遊行症 (夢遊症) 性欲過剰 性欲減退 性倒錯
27.
言語を理解する受容性能力、表現する表出性能力の ふたつの側面がある 言語は思考の表現であると同時に、他人との感情交流の手段
でもある話し方、会話の内容、書き残されたものから精神内 界を知ることができる 言語活動
28.
「躁状態」「うつ」 躁状態?興奮状態 声高に早口
多弁に話す言語過多 精神機能全般の緩慢が 反映される 口数が少なく、低い声 単調に途切れ途切れに話す 言語表情減少 うつ状態
29.
反復症 言葉や考え、動作を直ちに不随意に 意味もなく繰り返すこと
復唱の能動面が失われた現象 言語間代 語句の末尾の音節を反復すること 私たちたち 「認知症」 対話語り 活発に話しているように見えて、実は 何ら伝わる内容のない見せかけの対話
30.
反響言語 相手の言葉を直ちに繰り返すこと まったく理解を伴わない自動的な
おうむ返し言葉 口調を変えたり語を補う こともある 保 続 ある刺激に応じた語句や 動作が別の刺激に対して も繰り返されること 年齢は? 仕事は何をして いますか? 30です 30です 「統合失調症」 相手のいない談話 強迫的?自動的 被影響性をもつもの 対話形式の幻聴をもつもの 独 語 言語新作 日常にない新奇な語や言い回しを 作り出して、用いること その人にしかわからない造語 この間、売店で “ナナ“だった ナナ… 年齢は 年齢は?
31.
失語 大脳の言語領域の損傷により、獲得された思考の言語 記号化の機能が低下すること
32.
書字障害/読字障害 知能?視力、運動機能?眼球運動に障害はないにもかかわらず、 脳の後天損傷により、文字が書けない/書字言語の理解ができない
書字障害(失書) 読字障害(失読)